西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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西那須野から大田原へ・東野鉄道【前編】

ぶらり大人の廃線旅 第19回

廃線跡をイメージさせる「ぽっぽ通り」

 踏切のすぐ先から、廃線跡を利用した「ぽっぽ通り」が始まった。歩行者と自転車のレーンが別々になっている。新緑なので木々の緑が美しく、さすが栃木県でトチノキも植えられている。栃木県という名称は当初県庁が置かれた栃木の町に由来するが、当初はこの木そのものの「橡木」という表記だった。

東野鉄道の廃線跡を遊歩道化した「ぽっぽ通り」は西那須野駅付近から大田原まで続いている。

  東北本線を跨ぐ道路をくぐるが、こちらの天井はだいぶ低いので、東野鉄道の廃止後にできたのだろう。ここを汽車が走っていたことをイメージして地下道内の壁には汽車の絵が描かれている。各地に見られる「落書き防止用」を兼ねたような壁画であるが、こういう絵に必ずきっぱりと7色の虹が描かれているのはなぜだろうか。それより抜けた先の満開のツツジは見事だった。藤棚の白い藤も木陰を作っており、改めて廃止からの年数を感じさせる。

 ほどなく郊外に出て田んぼの傍らの道となった。田植えを目前にしてどの田も水を張っている。列車が走っていた頃はその姿を水面に映していたのだろう。廃止3年前の昭和40年(1965)の時刻表で確かめたら1日15本の黒羽方面行き列車(1本は大田原止まり)があった。片道ほぼ60~90分おきの発車で、本数は意外に多い。

田植え直前の田んぼの中をゆく廃線跡。

廃線跡をイメージして蒸気機関車を模した遊具も置かれていた。
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今尾 恵介

いまお けいすけ

1959年横浜市生まれ。中学生の頃から国土地理院発行の地形図や時刻表を眺めるのが趣味だった。音楽出版社勤務を経て、1991年にフリーランサーとして独立。旅行ガイドブック等へのイラストマップ作成、地図・旅行関係の雑誌への連載をスタート。以後、地図・鉄道関係の単行本の執筆を精力的に手がける。 膨大な地図資料をもとに、地域の来し方や行く末を読み解き、環境、政治、地方都市のあり方までを考える。(一財)日本地図センター客員研究員、(一財)地図情報センター評議員、日本地図学会「地図と地名」専門部会主査、日野市町名地番整理審議会委員。主著に『日本鉄道旅行地図帳』『日本鉄道旅行歴史地図帳』(いずれも監修/新潮社)『新・鉄道廃線跡を歩く1~5』(編著/JTB)『地形図でたどる鉄道史(東日本編・西日本編)』(JTB)『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み1~3』『地図で読む昭和の日本』『地図で読む戦争の時代』 『地図で読む世界と日本』(すべて白水社)『地図入門』(講談社選書メチエ)『日本の地名遺産』(講談社+α新書)『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)『日本地図のたのしみ』『地図の遊び方』(すべてちくま文庫)『路面電車』(ちくま新書)『地図マニア 空想の旅』(集英社)など多数。


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